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紙とはさみでできる!? 目頭切開Z法

紙とはさみでできる!? 目頭切開Z法

前回もお話ししましたが、内田法などに代表される皮膚を切除して目頭を開く術式に対して、Z法は皮膚をずらす(入れ替える)ことで目頭を開く術式です。

これは、Z形成という手技に基づいています。

Z形成は瘢痕拘縮・陥凹変形などの治療によく用いられる方法で、基本的には2つの三角皮弁を入れ換えることで2点間の距離の延長を行います。

切開線がZ字型になるため、このようによばれています。

これを説明するのによく下のような図を用います。

Z形成という手技

この図は、Z型に切開し(オレンジのライン)、XとYという二つの三角皮弁を入れ替える事で縦軸の長さが伸びていることを現しています。

これを利用して拘縮部の伸展などを行います。

この図をよく見ると、横軸は逆に短くなっている事が分かります。

通常の治療で用いる場合とは逆に、目頭切開ではこの横軸が短くなる事を利用します。

つまり、蒙古ひだの横方向の長さ(幅)を短くするためにこの手技を用います。

といってもこの図だけでは何の事か分かりませんよね。

という訳で、今回はイラストと折り紙を使ってこれを説明してみたいと思います。

簡単な方法なので、興味のある方は自分でトライしてみてください。

まずその前に、この説明を理解して頂きやすくするために蒙古ひだの解剖についてお話しおきます。

前回もお話ししたように、蒙古ひだは内眼角部を覆う皮膚の膜です。

正面から見える蒙古ひだの裏側はどうなっているかといえば、ここにも皮膚があります。

つまり蒙古ひだは表裏二枚の皮膚で出来ています。

これが涙丘の上で浮いている状態といえばなんとなく分かって頂けるでしょうか。

蒙古ひだは表裏二枚の皮膚で出来ています

この特殊な形態のために、目頭切開のZ法が理解しづらくなっています。

ではまず、実際の目頭切開のデザインを見てみましょう。

目頭切開のデザイン

むらさき色に引いたラインが切開線です。

するどい方は気付かれたと思いますが、Z法なのにZの形になっていませんね。

どちらかと言えばV型です。

実は先ほどお話した蒙古ひだの裏側部分に、切開線の続きが隠れています。

この部分が表に出るよう指で蒙古ひだを内側に引っ張ってみましょう。

指で蒙古ひだを内側に引っ張ってみましょう

如何ですか。

もう一本の線が出てきて、切開線のデザインがZ型になりましたね。

このデザインに沿って切開を加えたのち、Z形成の要領で三角皮弁の入れ替えを行います。

この入れ替えで目頭が開く部分が分かりにくいと思いますので、ここからはイラストと折り紙を使ってこの手術を体験してみましょう。

まず、折り紙を一枚用意したら、端から1/4位の位置で縦に折ります。

指で蒙古ひだを内側に引っ張ってみましょう

この折った部分の表裏がそのまま蒙古ひだの表裏になります。

次に白紙の紙に大きめに眼のイラストを描いたものを用意します。

白紙の紙に大きめに眼のイラストを描いたものを用意します

このとき蒙古ひだの無い眼、つまり内眼角部がしっかり見えている状態に描きます。

先ほど用意した二つ折りの折り紙で、このイラストの内眼角部を覆うと蒙古ひだのある目頭の完成です。

二つ折りの折り紙で、このイラストの内眼角部を覆うと蒙古ひだのある目頭の完成です

とてもシンプルですね。

「しょぼい」とか「こんなの蒙古ひだに見えない!」といった声がどこからか聞こえてきそうですが、ここは我慢してこの折り紙を蒙古ひだであると思ってください。

ここからは、目頭切開の過程に入りますが、このままではやりにくいのでイラストから一旦折り紙をはずします。

この折り紙に写真のように線を引き、これに沿ってハサミでカットします。

この折り紙に写真のように線を引き、これに沿ってハサミでカットします

これがZ法の切開になります。

といってもこのデザインではZ型になっていませんね。

どちらかと言えばV型です。

でも大丈夫です。

先ほどお見せした実際のオペのデザインと一緒で、Zの一辺が裏側に隠れています。

一旦、折った部分を戻してみましょう。

一旦、折った部分を戻してみましょう

ハサミでカットしたラインがZ型になっていますね。

通常の平面でのZ形成と違って、蒙古ひだのZ法は立体的なデザインであるため、奇麗なZではなくやや変形したZですが、それでも角が二つあるという意味ではZ型と表現して良いと思います。

これを再度元の折った状態に戻し、Vの角を支点に下向きの三角が横に向くように折り込みます。

再度元の折った状態に戻し
Vの角を支点に下向きの三角が横に向くように折り込みます

この部分はちょっと分かりにくいので、後に出てくる動画を参照してください。

鶴を折る時にも同じような工程がありましたね。

この作業がZ法の皮弁の入れ替えになります。

一見一つの皮弁しか移動していないように見えますが、折り紙を広げた状態で考えると二つの三角弁の入れ替えになっています。

折り紙を広げた状態で考えると二つの三角弁の入れ替えになっています

では、これを先ほどの眼のイラストと合体させて、この入れ替え作業を行ってみましょう。

眼のイラストと合体させて、この入れ替え作業を行ってみましょう

如何ですか。今まで隠れていた内眼角が出てきましたね。

三角弁の上の方に皮膚(紙)が余っていますが、実際の手術でもこの部分にすこし皮膚が余る(ドッグイヤーと言います)ので、これを切除します。

紙と違って皮膚には柔軟性があるので、実際に余る皮膚はほんのわずかです。

この治療の大きなポイントは、蒙古ひだが無くなっているにもかかわらず、余った少量の皮膚の切除以外に一切皮膚を切り取っていない事です。

という事は、従来の方法と違って切除による緊張が傷にかかりません。

そのため前回もお話ししましたが、非常に奇麗に傷が治りますし、後戻りもほとんどおこりません。

さらに、もし蒙古ひだを元の形に戻したい時は、同じ傷を切開して最初の手術と逆の手順で元の位置に戻るよう皮膚の入れ替えを行うだけです。

ドッグイヤーを切除しているので、完全とは言えないまでもかなり元に近い状態に戻すことが可能です。

皮膚を大きく切除している場合にはこういう訳にはいきません。

こうお話しすると、Z法が他の方法に比べすべての面で優れているように見えますが、欠点もあります。

皮膚を切除するタイプの目頭切開は、まず控えめのデザインで始めてみて、足りなければさらに皮膚を追加切除していくことで微調整ができます。

つまり、少しずつ形を調整していく事が出来ます。

ということは、あまり経験の無いドクターが行ってもそれほど大きなミスにはなりません。

それに比べZ法のデザインは一発勝負なので、どういうデザインをすれば最終的にどんな目頭になるのかしっかり把握した上で手術を行う必要があります。

特にこの手術は通常のZ形成と違いやや変則的なZ形成となるので、こればかりは多少の経験が必要です。

このデザインさえきっちりできれば、個人的にはZ法はもっとも合理的な目頭切開の術式であると思います。

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